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鋳造と鍛造

 

鉄は合金

鋳造(ちゅうぞう)と鍛造(たんぞう)の成形方法の説明に入る前に、その材料である鉄について触れておきましょう。鉄は身近な材料ということもあり、日常の会話にも「鉄の○○」といった表現はよく出てきますが、厳密に言うと様々な道具や部品の材料となっている「鉄」は、純粋な鉄ではなく炭素や鉄以外の金属との合金です。日常会話などで単に「鉄」と言うときは鋳鉄(ちゅうてつ)や鋼(こう)を指していると考えて良いでしょう。

鋳鉄という単語は鋳物(いもの)製品を指す用語としても広く使用されていますが、材質を表す呼び名でもあります。詳細は次の章で述べますが、鉄-炭素系材質の呼び方や分類などは結構曖昧なようです。スチームトラップやバルブの材質にも、鋳鉄と鋼がよく使用されます。身近な例では、鋳鉄は鉄瓶や道路にあるマンホールの蓋などに使用され、鋼は包丁などの刃物や鉄筋、鉄骨、蒸気系統で使用する管などに使用されます。

鋳鉄

鋳鉄(マンホールの蓋/鉄瓶)

鋼(和包丁/管)

 

鋳鉄と鋼の違い

鋳鉄と鋼の違いは炭素の含有量で、炭素含有量0.008%から2.0%までが鋼、2.0%以上の炭素を含有するものが鋳鉄と呼ばれます。その成分による特性の違いは成形方法にも影響します。

鋳鉄を成形する場合、一度溶解してから目的に近い形状に鋳込む(鋳造する)必要があり、鋳鉄は鋳造専用なので鋳鉄と呼ばれます。一方、鋼は鋳造でも鍛造でも成形することができます。鋳鉄は、溶かした材料を型に流し入れて成形する鋳造性に非常に優れている反面、粘りなどの強度が炭素鋼よりも小さく、溶接ができないなどの特徴があります。そのため、強度と接続性の点から高温高圧配管では使用できません。

鋼は鋳鉄よりも強度があり溶接も可能なため、高温高圧配管でも使用可能です。鋼の中で最も基本となるものが、鉄と炭素の二成分系である炭素鋼ですが、用途によりステンレス鋼やモリブデン鋼など耐食性能や耐温度性能を高めた合金鋼も使用されます。

 鋳鉄
炭素含有量約2%以上0.008~約2%
成形方法鋳造鋳造・鍛造
溶接不可

 

鋳造と鍛造の成形方法の違い

鋳造も鍛造も鉄系材質だけに適用する成形方法ではなく、様々な材質に適用されています。

鋳造

鋳造とは、溶かした材料を型に流し入れて成形する方法です。この方法で作られる素材や製品は鋳物(いもの)とよばれ、例えばお寺の釣り鐘(梵鐘)もこの方法で作られます。釣り鐘の場合、材料は鋳鉄や鋼ではなく青銅です。

鋳造と成形方法

鍛造

鍛造とは棒状や板状の材料を、油圧や水圧を用いたプレス機で圧力を加えたり、ハンマーで叩いたりして成形する方法です。例えば和包丁はこの方法で作られます。前述の通り鋳鉄は鋳造でしか成形されないため、わざわざ「鋳鉄鋳造品」とは呼ばれず、材質も成形方法も含めて「鋳鉄」や「鋳鉄品」と呼ばれます。これに対して、鋼は成形方法が複数あるため、「○○鋼鋳鋼品」「○○鋼鍛鋼品」のように材質名と成形方法を並べて呼ばれます。

鍛造の成形方法

 

同じ材質における鋳造と鍛造の使い分け

鋳造

鋳造は溶けた材料を型に流し入れて成形するという特性上、複雑な形状や内部に空間がある形状を成形することが得意です。TLVでは、内部にフロートを収め、そのフロートを浮かべるための水を張る空間が必要なフロートタイプスチームトラップのボディは、鋳造で製作しています。

鋳造後加工後

鋳造後

加工後(鋳造)

鍛造

鍛造は「鍛える」という漢字からも想像できる通り、プレスで加圧したりハンマーで叩いたりして成形します。そのため、複雑な形状や内部に空間がある形状の成形は苦手です。鍛造で形成できない形状や空間は、後工程において切削・穴開け加工を施して形成する必要があります。TLVでは、全体がさほど大きくなく、内部に大きな空間を必要としない高圧用ディスクタイプスチームトラップのボディなどは鍛造で製作しています。

鍛造後加工後

鍛造後

加工後(鍛造)

 

生産工程における成形方法の使い分け

鋳造または鍛造で成形される鋼に対し、「鋳造で複雑な形状も成形できるなら成形方法を鋳造に一本化すれば良いのでは」と思われるかもしれません。しかし、話はそう簡単ではありません。強度があり溶接も可能という特性を持つ鋼も鋳造で成形することは難しく、鋼の成分や製品形状によっては溶解した鋼が型に充分に回り込まない、内部に気泡(巣)ができる、などの鋳造欠陥が発生することがあります。一方、鍛造の場合も型ずれ、割れ、不完全な形状に成形されるなどの鍛造欠陥が発生することがあり、どちらの成形方法にも長所短所があります。

そのため、コストと品質のバランスが取れた製品を提供するためには、製品の大きさ、形状、1ロットで生産する個数などを考慮した上で、鋳造と鍛造のどちらが有利になるかを判断して使い分けることが必要です。成形工程だけでなく後工程も含めて、製品として完成するまでのトータルコストや歩留まりを考えた上で、有利な方法を選択します。