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配管

長期間停止する蒸気配管

 

蒸気を停止するときの配管の処置

長期間蒸気を停止する際、蒸気輸送配管はどのように処置すればよいでしょうか。当然ながら、目的によって取るべきアクションが異なります。内部の錆びの進行を防止したいのか、バルブやスチームトラップが固着して使えなくなるのを防止したいのか、はたまた小動物が管内に入り込むことを防止したいのか・・・。

バルブ類の固着は、一般的に配管内部の錆びほど頻繁にはおきませんが、年間数時間程度しか使用しないような箇所は危険です。長期間動かさずに良好なコンディションを維持することは難しく、時々使用して動かすことが望ましいと言えます。

配管内部の錆びについては、機器に比べると幾つか対策があります。配管を安全な状態で維持することを考える場合、メインになるのは内部の腐食・錆び対策でしょう。これについて考えてみます。

 

蒸気用途で主流の炭素鋼管は錆び対策が必要

多くの場合、蒸気を輸送するための配管には炭素鋼の管が使用されます。炭素鋼は強度やコスト、扱いやすさに優れた非常に使いやすい材料ですが、錆びやすいという特長もあります。そのため管に限らず一般的には炭素鋼を使用する場合、錆び対策として塗装などで表面を保護しますが、管の場合、外面は塗装できても内面は塗装することができません。

使用する流体によっては樹脂などの被膜で内張り=ライニングを施した管を使用する場合もありますが、蒸気ではその手法が使えません。その結果蒸気配管では管内の錆びに悩まされることになります。

通常、一度でも蒸気を流したことがある蒸気配管の内側は錆びてしまいます。そのため、蒸気輸送配管においては「錆びさせないこと」を目的とするのではなく「短期間で穴が開くほどひどく錆びを進行させない」ことが現実的な目標となるでしょう。

炭素鋼の錆びは

  • 炭素鋼
  • 酸素

の3つが揃うと進行します。

蒸気配管内部が錆びるのは使用中ではなく、蒸気の送気を停止した後です。送気を停止すると、管内の蒸気は凝縮して液体の水になります。そして蒸気が凝縮した空間に空気が入り込んできます。これにより、炭素鋼と水と酸素が揃ってしまい、錆びが進行します。

蒸気配管内部が錆びるのは送気を停止した後です。管内の蒸気は凝縮して水になり、蒸気が凝縮した空間に空気が入ります。これにより、炭素鋼と水と酸素が揃い、錆びが進行します。

 

管内の錆び対策:水を抜く

最もオーソドックスな方法としては、水を抜いてしまうことです。しっかり水を抜くことができれば著しい錆びの進行は防ぐことができるでしょう。

ここで問題になるのは上手く水が抜けるかどうかです。水抜き箇所を開放するための手間や仕組みが必要です。また、適切な箇所に水抜き用のバルブが設置されていないと、配管が低い箇所や配管自体の低部に水が残留し、その部分の腐食が進行します。

適切な箇所に水抜き用のバルブが設置されていないと配管が低い箇所や配管自体の低部に水が残留し、その部分の腐食が進行します

つまり、効果を上げるためにはあらかじめ水抜きを考慮した設計施工がなされていることが必要になってきます。

低所には水抜きを設置します。ドレン取り出し口は配管の低い位置に施工します

では、水が残留しそうな箇所はエアブローで強制的に残留水を追い出すことはできないでしょうか?残念ながら、上述の観点で水抜きを考慮した設計施工がされていない配管ではこれもあまり効果がないと思われます。上述の残留箇所やエアベント機能を持ったスチームトラップは、圧縮空気が素通りしてしまう可能性があるためです。

水が残留しそうな箇所はエアブローで強制的に残留水を追い出すことは、圧縮空気が吹き抜けてしまって上手くブローできない可能性があります

 

管内の錆び対策:空気を入れない

一方、水を抜かなくても空気を遮断すれば錆びの進行を抑制することができます。蒸気系統のバルブを閉止し、外部と遮断することができれば配管内に存在していた蒸気が凝縮し管内が真空に近づくため、鋼が腐食しにくい環境になります。

配管内部に空気を侵入させない方法としては、配管系統を閉めきった状態で維持することが必要ですが、スチームトラップや自動排気弁などから空気を吸い込んでしまう可能性があり、蒸気停止後適切なタイミングで速やかかつ確実に閉めきることができるかどうかが成功のカギとなります。

外界との境界となるバルブ類は全て閉弁状態にし、大気側からの空気の流入を防がなければなりません

実際には配管全体にわたって実施することはかなり難易度が高く、特定の区間や装置・容器などに限定して実施するのが現実的と思われます。また、蒸気が凝縮した水は管内に残留しますので、水質の確認が取れていない条件ではあまり長期間保水することは高リスクですが、例えば週末土日の間停止する程度なら、閉めきっておくことも一つの方法です。

配管全体は無理でも一部区間なら閉めきることが可能な場合があります

 

基本的な設計と施工が重要

このように、停止操作時に気を付けるべきポイントはありますが、結局のところ設計段階から基本に忠実にドレン対策がなされていることが重要だと言えるでしょう。

配管とは違って、ボイラーについては長期間停止する場合、腐食作用が低い状態となるよう水質を調整し、水管やドラムの保護に適した薬剤を添加したうえで満水にして保管する方法や、完全に水を抜いた後、乾燥剤を入れて保管する方法などがあるそうです。しかし、距離が長く広範囲に広がる蒸気配管にこれらの手法を応用するのは難しそうです。

 

スタートアップ時は改めて注意が必要

再び蒸気を流して使用する際には、配管内の錆びを下流に流さないことが重要になります。このスタートアップ時のブローは、ウォーターハンマー対策としても必要なことなので、毎朝のスタートアップ時に実施されていることと思いますが、長期間停止させた後は管内を洗い流す「フラッシング」の観点も加味して念入りにブローしましょう。蒸気の送気開始時の注意点については蒸気の送気開始・停止時の注意点 前編で説明しています。

この際に重要なことも適切な箇所で水抜きをすることです。スタートアップ時の「初期ドレン」をブローバルブやスチームトラップ設置箇所のバイパスバルブなどを駆使して排出します。配管からのドレンの水抜きについては配管からのドレン排除 前編(ドレンの取出し方)で説明をしています。

 

管内に錆びの発生が疑われる場合は

錆び対策や基本的な設計や施工に注意を払っていても、日々の工場の運転の中で蒸気用途での炭素鋼配管の錆びを防止することは難しいと言えます。炭素鋼配管は保温材などで覆われていることも多く、 そのコンディションを把握することも、また困難です。

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