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蒸気の制御

100℃以下の蒸気 後編(真空蒸気加熱システム)

真空蒸気加熱システムとは?

間接加熱利用で、60℃や90℃などの熱源温度が必要な場合は、温水を循環させる方式がよく用いられますが、蒸気でもこれらの温度域の加熱ができます。

100℃以下の蒸気 前編(真空蒸気とは?)にもある通り、大気圧以下の飽和蒸気では、熱源である蒸気の温度そのものが60℃や90℃になります。

真空蒸気加熱システムは大気圧以下の飽和蒸気を加熱源として用いることができるシステムです。他の熱源に比べ、真空蒸気加熱システムには以下の特長があります。

  • 温度ムラのない均一な加熱ができる
  • 温水などに比べて素早い加熱ができる
  • 製品と熱源の温度差(ヒートショック)を小さくできる
  • 設備の省スペース化が図れる

真空蒸気加熱と温水加熱の違い

これらの特長は全て、真空蒸気が飽和蒸気であるということに基づいています。飽和蒸気であるため、蒸気で満たされている空間は温度が均一であり、蒸気から被加熱物へは、潜熱による素早い熱の受け渡しが行われます。

一方の温水加熱は、熱源である温水自体の温度が下がることで被加熱物に熱を与えるため、供給口付近と排出口付近の温水を比べると温度差が生じています。この温度差を小さくし必要な熱量を素速く供給するためには、温水の供給量(循環量)を莫大な量にしなければなりません。

真空蒸気加熱と温水加熱の違い

総括伝熱係数について

間接加熱における熱の伝わりやすさは、総括伝熱係数U[W/(m2・K)]という数値で表されます。U値が大きいほど同じ時間でも多くの熱を伝えることができます。

  • Q:熱量[W]
  • A:伝熱面積[m2]
  • ΔT(T1-T6):温度差[℃]
  • U:総括伝熱係数[W/(m2・K)]

これを生産設備にあてはめてみると、被加熱物が同じで伝熱面積(=釜)、ΔTも同じであれば、U値が大きいほど同じ時間に多くの熱量を伝えられます。つまり、バッチ時間を短縮できる可能性があるということです。

総括伝熱係数

U値は伝熱抵抗Rの逆数として表され、U=1/Rの関係があります。伝熱抵抗Rは R=1/h1+L/λ+1/h2=1/U で表されます。

  • h1:熱源側の熱の伝わりやすさ(h=境膜伝熱係数)
         例)温水=1000~6000[W/(m2・K)]、蒸気=6000~15000[W/(m2・K)]
  • h2:被加熱物側の熱の伝わりやすさ 例)水=約1000[W/(m2・K)]など
  • λ:釜の熱の伝わりやすさ(λ=熱伝導率)
         例)炭素鋼=50[W/(m・K)]、ガラス=0.9[W/(m・K)]など
  • L :釜の厚み 例)L=0.015[m]など

この式から、熱の伝わりやすさは釜の厚みと材質に大きく左右されることがわかります。それに比べて、h1とh2の影響は小さくなっています。例えば、炭素鋼の釜では熱源を変えると数十%向上するU値が、グラスライニングの釜では、熱源を変えてもU値の変化は数%程度です。

しかし見方を変えると、熱伝導率の小さいグラスライニングの釜でも、熱源を変えれば数%もU値を向上させることができるとも言えます。既存設備の能力をアップさせたいが釜は変えられないというとき、熱源変更が大きな意味を持ってきます。

U値 : 総括伝熱係数の計算

総括伝熱係数の計算式

下記の例を参考に数値を入力し「計算する」をクリックしていただけますと、総括伝熱係数が計算できます。

各数値の参考例
項目 参考値 単位
h1:熱源の熱の伝わりやすさ 温水:1000~6000 蒸気:6000~15000 [W/(m2・K)]
h2:被加熱物の熱の伝わりやすさ 水:1000 - [W/(m2・K)]
λ:釜の熱の伝わりやすさ 炭素鋼:50 ガラス:0.9 [W/(m・K)]
L:釜の厚み 0.015 - [m]
h1:熱源側の熱の伝わりやすさ[W/(m²・K)]
  • 必須項目です
  • 半角英数字で入力してください
h2:被加熱物の熱の伝わりやすさ[W/(m²・K)]
  • 必須項目です
  • 半角英数字で入力してください
λ:釜の熱の伝わりやすさ[W/(m・k)]
  • 必須項目です
  • 半角英数字で入力してください
L:釜の厚み[m]
  • 必須項目です
  • 半角英数字で入力してください
U:総括伝熱係数