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スチームトラップの基本

サーモスタティック・スチーム トラップ(バイメタル式)

 

バイメタルを利用して温度差で作動するスチームトラップです

温度変化に伴って変形する性質を持ったバイメタルという素材があります。この素材は膨張率の異なる2種類の金属を貼り合わせて作られています。
これを弁駆動機構として採用したものがバイメタル式のスチームトラップです。
例えば、ある温度を境に、曲がっていたバイメタルが伸びるような形状に加工したとします。その変形によって生じる変位を弁の開閉動作として利用するのです。

温度変化に伴って変形する性質を持ったバイメタルという素材があります

飽和蒸気は圧力が維持されていれば温度は一定ですが、蒸気が凝縮したドレンは圧力が維持されていても大気への放熱で温度が低下します。ドレンに温度変化が生じることを利用して作動する作動原理です。非常にシンプルでわかりやすい構造とわかりやすい作動です。

バイメタル式スチームトラップの作動原理

バイメタル自体は温度変化を機械的な動作へ手軽に変換できる機構として知られ「サーモスタット」として電気器具の温度スイッチなどに広く使用されており、身近な素材です。

 

蒸気の圧力が変化しても開閉弁温度がほとんど変わりません

ところで、バイメタルが変形する温度は例えば120℃のように決まった一点です。
そのため、ある温度で開閉弁作動するように作られたバイメタル式スチームトラップの場合、蒸気圧力が変化して蒸気温度が変わったとしても同じ温度付近で作動します。

バイメタル式スチームトラップは蒸気の圧力が変化しても開閉弁温度がほとんど変わりません

作動温度が一点に固定されていることはスチームトラップとして長所にも短所にも成り得ます。

決まった温度で作動する特性を活用した例

まず長所から考えてみましょう。
この特徴を長所として活用しているスチームトラップに「蒸気トレース」用の温調トラップがあります。決まった温度で作動することを逆手にとって、蒸気温度と作動温度の差を大きくすることでスチームトラップの上流側にドレンを滞留させます。わざとドレンを滞留させてその顕熱を利用しようという考え方です。つまり、一般的なスチームトラップとは異なる狙いが長所になります。「蒸気トレース」は計器の凍結防止用加熱や、常温では粘度が高くなる流体を輸送する配管の保温などに用いられます。

バイメタル式スチームトラップ:決まった温度で作動する特性を活用した例

決まった温度で作動することが弱点になる例

次に短所を考えてみましょう。
作動温度よりも高い飽和温度をもつ蒸気圧力で使えばドレン温度が低下して開弁するまでに時間を要するためドレンが滞留しますし、作動温度よりも低い飽和温度をもつ蒸気圧力で使うと蒸気が流れっぱなしになってしまいます。もちろん、蒸気とドレンの温度が同じである飽和温度で使用することもできません。極力蒸気を漏らさずに速やかにドレンを排出することが使命とされる蒸気輸送配管のドレン抜き用途では使用できません。

バイメタル式スチームトラップ:決まった温度で作動することが弱点になる例

 

バイメタル式の現状

作動温度が一点固定ならば限られた圧力でしか使用することができないため、バイメタル式スチームトラップでは内部に調整ネジを備えていて、作動温度を変更することができるようになっているものが一般的です。それでも、使用開始前に条件に合わせて調整が必要ですし、せっかく調整しても使用中に意図せず条件が変わった場合には追従してくれません。

このような理由で、現在ではバイメタル式スチームトラップは温度差で作動するサーモスタティックタイプの中でも主流ではなくなっていますが、バイメタル自体は、フロート式、バケット式、ディスク式など各種スチームトラップで運転開始初期の空気を排除するためのエアベント機構・強制開弁機構として内蔵され、広く活用されています。

フロート式

バイメタルによるエアベント機構・強制開弁機構(フロート式スチームトラップ)

初期立ち上り時は低温のため、内蔵のバイメタルがフロートを持ち上げることで強制的に開弁させ、初期空気と低温ドレンを速やかに自動排除して立ち上り時間を短縮します。

ディスク式

バイメタルによるエアベント機構・強制開弁機構(ディスク式スチームトラップ)

常温時、C字環状に加工されたバイメタルリングは径が小さくなり、テーパー状の斜面をせり上がります。バイメタルリングによりディスク弁は持ち上げられ、トラップは強制的に開弁された状態になります。トラップ内に大量に流入してくる低温エアは低温ドレンと共に、この間に排出されます。

流入してくるドレンの温度が上がってくると、C字環状に加工されたバイメタルリングは径が拡がり、テーパー状の斜面を滑り下りて強制開弁状態を解くと共に、トラップの作動とは無関係になります。