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蒸気のトラブル

液体配管の空気抜き

 

液体配管の残存空気によるトラブル

今回は蒸気のお話から少し離れて、液体配管について取り上げます。

液体配管は液体を送るための配管であり、管内が輸送液体で満たされている状態が理想ですが、送液前の「カラ」の配管内には空気が存在しています。液体配管中に空気を始めとする不凝縮ガスが残っていると、以下のような問題が起こる可能性があります。

配管やポンプの破損

液体用ポンプは気体を送ることができません。気体が入り込むとポンプが空転状態になり、吐出圧が急激に低下します。これが脈動の原因になります。振動や衝撃が発生し、液体を上手く送ることができないばかりか、配管やポンプの破損に繋がることもあります。

配管やポンプの破損

液体のタンクへの充填不良

タンクでは、残留不凝縮ガス層がクッションとなって反発し、所定の液量を充填できないことがあり、液面計も残留不凝縮ガスにより、実際とは異なるレベルを示すことがあります。

液体のタンクへの充填不良のイメージ

このような問題を防ぐには、液体用エアベント(自動空気抜き弁)で空気を上手く追い出しながら液体を送るようにします。「エアベント」とは空気抜きの意味で、広義には単なるベント配管も含みますが、ここでは空気抜き弁・自動排気弁として取り上げます。排気が終わるまでは開弁しており、排気が必要なくなると自動的に閉弁する液体用自動空気抜き弁です。

 

液体用エアベント(自動空気抜き弁)の効果的な設置場所

自動空気抜き弁といっても、弁の開閉は自動的に行われますが、強制的に不凝縮ガスを集めて排出してくれるわけではありません。効果を高めるには、設置する場所も重要です。

ガスが集まりやすい箇所、抜けにくい箇所

不凝縮ガスが集まりやすい箇所への設置が効果的です。また、入り込んだ不凝縮ガスが抜けにくい箇所に設置することもあります。ポンプ本体やその直後などです。

ガスが集まりやすい箇所、抜けにくい箇所のイメージ

頂部や上部

輸送液体と不凝縮ガスの間には比重差があり、不凝縮ガスは相対的に上方に集まります。そのため、タンクや装置の頂部や、配管が鳥居状になっている箇所の上部に設置することが基本です。

不凝縮ガスが相対的に集まるタンクの頂部や鳥居状の配管のイメージ

但し一方で、不凝縮ガス層は水撃を緩和するクッション層の役割を果たすことがありますので、ガスを排除する速度が速くなりすぎないよう配慮した設計・選定を行い、設置個数や排気能力を決めていくことが必要です。

 

構造はフロートタイプが一般的

「液体中から気体を排除する」・・・この動作はちょうどスチームトラップ等ドレントラップの「気体中から液体を排除する」の逆です。スチームトラップでは蒸気とドレンの温度差を作動原理に利用するタイプもありますが、不凝縮ガスと輸送流体には温度差が無いため、自動空気抜き弁では浮力を利用したフロートタイプの構造が一般的です。本体内の液面の上昇に合わせて、フロートが上昇することで閉弁する機構です。

 

液体用エアベント(自動空気抜き弁)の真空破壊機能

不凝縮ガスを排気し、排気し終えると閉弁するという機能はどの自動空気抜き弁も備えていますが、大気側からの空気の吸い込みについては、可能なタイプと不可能なタイプの2つに分かれます。

空気の吸い込みが可能なタイプは、送液停止時に大気側から空気を吸い込んで真空を破壊し、サイフォンの原理による逆流を防止します。このタイプは吸排気弁とも呼ばれます。

サイフォンの原理による逆流

サイフォンの原理による逆流

吸排気弁による逆流の防止

吸排気弁による逆流の防止

空気の吸い込みが不可能なタイプは、送液停止時も大気側から空気を吸い込まず、管内が液体で満たされる状態を維持します。

どこまでの役割をエアベントに持たせるか、目的や用途に応じて使い分けましょう。