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蒸気のトラブル

スチームロッキング 前編(装置の構造自体が原因の場合)

 

原因不明?の温度低下

蒸気を熱源とした加熱設備を利用する中で、原因不明の温度低下に見舞われたことはありませんか?それは、スチームトラップには異常が無いのに、ドレンを上手く排出できなくなる「スチームロッキング」や「エアバインディング」といわれる現象かもしれません。

「スチームロッキング」は蒸気、「エアバインディング」は空気(または二酸化炭素などの不凝縮ガス)と原因は異なりますが、これらのメカニズムは共通で、「ドレンのトラップへの流入時に、先に流入した蒸気や空気などの不凝縮ガスが原因となり、トラップが閉弁してしまう」というものです。

スチームトラップは、ドレンを排出し、蒸気を漏らさない自動弁ですから蒸気が来たときには閉弁しようとします。 この動きは正常な動作ですが、装置の構造によってドレンの排出遅れが生じたり、トラップへのドレン流入がスムーズに行かなくなり、システム全体の効率が低下することがあります。

このような現象が「スチームロッキング」です。同様の現象がエアによって引き起こされた場合は「エアバインディング」と呼ばれています。トラップ自体は正常に作動しているのに、ドレンの排出が出来なくなる点が共通します。

 

発生のメカニズム

このような現象が発生する原因は、以下の2つに大別され原因によって対処方法は異なります。

  • 蒸気とドレンが混ざり合った状態で装置から排出されトラップへ流入する
  • トラップ周辺の配管に問題があり、ドレンが優先的にトラップへ流入できない

1.の場合は、スチームトラップにオプション装着できるロックレリーズバルブやニードル弁を用いてバイパス回路を形成し、少量の蒸気を二次側へ逃がす必要があります。

2.の場合は、蒸気や空気とドレンが上手く置換できるように配管を修正する必要があります。

スチームロッキングは徐々に進行し、なかなか自然には解消しません。その上装置の加熱能力が低下しても蒸気が“噛んでいる”ため、トラップ自体の温度は高めに維持されていることもあり、発見が難しいのも厄介な点です。

 

スチームロッキングが起こりやすい装置構造とは

今回は、1.の装置構造に起因する場合について詳しく説明します。2.の周辺の配管に原因がある場合についてはスチームロッキング 後編で詳しく説明しています。

蒸気とドレンが混じり合っているのであれば、フラッシュタンクのような容器で流速を落として、ドレンを下方に落とす、いわゆる気液置換をトラップ手前で行えば良さそうですが、このためには気液分離された蒸気が熱交換器に戻ることが必要です。

装置の構造によっては気液分離された蒸気が熱交換器部分に戻ることができないものもあります。サイフォン管やバケットなどが用いられる回転体をもつ熱交換器がその代表例です。装置の構造を変えることは難しいため、このような場合は別の対策を考える必要があります。

サイフォン管では蒸気の圧力でドレンを押し上げるため、蒸気の混じったドレンが2次側に排出されます。しかしその蒸気によってスチームロッキングが発生するとドレンが排出できなくなります。

スチームロッキングが起こりやすいサイフォン管

 

対策として蒸気を逃がす

対策としては単純で、ロッキングの原因となっている蒸気を逃がします。具体的には、スチームトラップとしては不本意ながら、二次側へ少し蒸気を漏らすのです。

そのためには、「ロックレリーズバルブ」や「ニードル弁」等が用いられ、最小限の逃がし量になるよう調整します。

ロックレリーズバルブ

「ロックレリーズバルブ」はスチームトラップの自動エアブロー機構を利用しこれを強制的に開弁させることによって蒸気を逃がすものです。

スチームロッキングの対策:ロックレリーズバルブ

ニードル弁

「ニードル弁」は蒸気逃がし専用のバイパス回路です。スチームトラップに内蔵できるモデルもありますし、文字通りスチームトラップとは別にバイパス配管を組む場合もあります。

スチームロッキングの対策:ニードル弁

スチームロッキングの対策:配管のバイパスを作る

装置を正常運転する為にはやむを得ませんが、漏らす蒸気はロスとなります。そのエネルギーを無駄にしないよう、廃熱回収も同時に検討する必要があります。